人の命って

最近、人の命について考えることがあった。
母方の祖母のことを思い出した。
父方の祖母は覚えていない、なぜなら僕が産まれて数日後に亡くなったらしいのだ。
父方の祖父は僕が七歳の時に亡くなった、あまり人の命についてよく分かっていない時期だった。
母方の祖母が亡くなったのは今から五年前の夏、一応受験を控え夏休み返上で学校の補習に出ていた時期だ。

和歌山まで何時間も掛けて行き、祖母が棺に入っているのを見た。
「ああ、こんなに小さかったのか、それとも僕が図体だけ大きくなったせいなのか」
と思い、涙が出そうになったが、そんな時祖父の姿が目に入った。
酷く小さな背中に見えた。
あんなに大きくて、大好きだった祖父の背中。
今目の前にあるのは小さな背中。
「こんなにも、歳月は経っていたんだな…」
少し悲しくなった。
弟はまだ死についての考えは浅い、姉はもう人の死を乗り越える強さを持っていた。
僕だけが半端に死を考え乗り越えられない時期だった。
でも、祖父の小さくなった背中を見て僕は泣いたらいけない。
せめて祖父の前だけでは泣いたらいけない。
そう思った。
一晩、蝋燭と線香が絶えない様に見ていた。
その間祖父は一睡もしなかった。
僕も一睡もしなかった、いや出来なかった。
朝散歩に行くといって、一人で泣いた。
一旦泣き出すとなかなか止まらなかった。

こんな僕に何が出来る?
じいちゃん、ばあちゃんは色んなものをくれた。
だけど、僕は何も返していない。
だからせめて、じいちゃんに心配されないように、じいちゃんが泣けるように。
僕は泣くのをこらえた。

骨を拾う時、逃げ出したかった。
十七年の歳月で、四度目の骨拾い。
初めて辛いと思った。
髪も、肉も無くなったからだ。
荼毘に付される祖母の体。
形を残さないで消えた部分。
号泣する祖父。
目に一杯涙を溜め、僕は意識が朦朧としていた。


いつか、祖父が荼毘に付される時、僕はどんな顔をするのだろう。
そして、自分が死ぬ時僕は笑えるだろうか。
色んな人に逢いたくなった。